技法紹介
疋田絞・・・絞り技術の最高峰
1尺(約38cm)横1列の中に、粗めのものでも40粒、細かいものになると60もの粒が括られます。
一粒一粒、爪の大きさにも満たない面積をつまんで四つに折り、絹糸で3回から7回巻いて括るという作業をひたすら繰り返すことで模様を作ります。
1枚の着物で12万粒から30万粒括ります。
一目絞絞り・・・絞り目で描く線柄
鹿の子絞りで線柄を描くときに、用いられる技法が一目絞です。一寸(3.8cm)の長さに10~15粒程度の絞り目を作り絞ります。絞り目は絹糸で2回巻き締めて括ります。人目絞とも記し、「目交」「目染」などとも呼ばれました。疋田絞と併用される場合は、まず一目絞から施されます。
縫締絞・・・縫い目が描く絞り
生地を綿糸で平縫いし、その糸を引き締めて、生地の重なりをつくり、防染する技法が縫締絞です。
糸の縫い入れ方によって、平縫い締め、巻縫い締め、合わせ縫い締め、折り縫い締めなど、それぞれ特徴のある表現になります。
傘巻絞・・・面を表現する絞り
円や方形などの幾何学模様から花や木の葉の形まで、自由に表現できる技法です。
下絵に従って綿糸で細かく生地を平縫いし、縫った糸を引き締めて根元に寄せ、縮められた部分の生地のシワを整えて、絞った部分を根元にして上へ巻き上げます。
巻き上がった絞り目の形が唐傘のように見えることから、その名がつきました。
桶絞・・・封じ込めの技
桶絞は、比較的大きな部分の染め分けに使われる技法で、専用の木桶を用いて行います。
防染したい部分を桶の内側に入れ、染色したい部分だけを桶の外に出し、蓋や底を強く締めつけて密封し、そのままの状態で、桶ごと染め液の中に漬け込み染色します。
染め分け部分を、正確に表すための桶内部の生地の固定方法や、蓋の間から染料が浸透しないようにするための細かな技術を習得するには、長い経験が必要です。
使用する色数だけ桶詰めから染色までの工程を繰り返します。
帽子絞・・・華やかな多色使いをつくりだす
防染部分をビニールで覆い、防染する力を高めた技法です。
現在では帽子にはビニールを用いていますが、昔は竹の皮を使用していました。
防染能力が高いため、白生地などを染めた場合は、帽子の部分は真っ白のまま上がります。
白く上がった部分に、挿色をしたり、模様を書き入れたりするのによく使われます。
辻が花染と言われる作品はこの技法を駆使したものです。
「伝統的工芸品」となるための技法など
京鹿の子絞の作品の中で、「伝統的工芸品」に位置づけられるのは次の技法を用いたものです。
この条件を満たした作品には、「経済産業大臣指定伝統的工芸品」のシンボルマークが与えられます。
技法
- 下絵には、青花等を用いること。
- くくりは、次のいずれかによること。
- 疋田絞にあっては、指のつま先で摘まんで四つ折りにし、3回以上7回以下糸巻きをした後、引き締めをすること。
- 一目絞にあっては、指のつま先で摘まんで四つ折りにし、2回引き締めをすること。
- 傘巻絞にあっては、平縫いにより引き締めをした後、「巻上げ」をすること。
- 帽子絞にあっては、平縫いにより引き締めをした後、防染部分に「皮包み」及び「巻上げ」をすること。
- 縫締絞にあっては、平縫い、折縫い又は巻縫いによること。この場合において、くくり部分は均一に引き締めをすること。
- 唄絞にあっては、唄絞台を用いて、「巻上げ」及び「巻下げ」をすること。
- 針疋田絞にあっては、針疋田絞台を用いて、3回以上7回以下糸巻きをした後、引き締めをすること。
- 針一目絞にあっては、針一目絞台を用いて、2回引き締めをすること。
- 「染め分け」をする場合には、次のいずれかによること。
- 桶絞にあっては、平縫いにより引き締めをした後、防染部分を桶の中に密閉して染色をすること。
- 板締絞にあっては、型板を折り重ねた生地の間にはさみ、両端を固定した後、染色をすること。
- 染色法は、手作業による浸染とすること。
原材料
- 生地は、伝産指定品は、絹織物とする。ただしそれ以外は麻綿等の織物も使用する。
- くくり糸は、絹糸、綿糸又は麻糸とすること。